【3泊4日、道東。 20191020-23】1日目 『成田』から『新千歳・札幌』を経由して『旭川・網走』へ
Peach MM585便。
客席は満席だった。
飛行機は、離陸してから日本列島の真上をなぞるように飛んでいた。
機内に持ち込んだ小説も、旅行書もほとんど読めなかった。
せっかく窓側の席を予約したのに、惰眠を貪って空の旅が終わってしまったからだ。
あっという間に本州は見えなくなり、北の大地が見えてきた。
シートベルトの着用サインが点灯し、いよいよ下降するようだ。
目下には紅葉も落葉し始めた冬目前の道央の様子が伺える。
そして、成田から2時間。飛行機は新千歳にほぼ定刻で着陸した。
主翼のちょうど真横あたりに座っていた私が降りれるのは、前の乗客が降りてからになる。
少し時間がかかって、機体から降りた。
ようやく北の大地を踏めると、まず寒さが私を襲った。
成田ではジャケットを着ると暑いくらいで、機内ではシャツ1枚だった。
その温度差に追いやられ、タラップから降りて逃げ込むように迎えのバスに乗り込んだ。
手荷物受取所では預けたリュックサックがすぐに回ってきた。
そしてまず向かったのは階段を降りた先、「JR北海道 新千歳空港駅」だ。
改札横のみどりの窓口には並びもなく、空港ビルに到着して5分と足らず、飛行場内のタラップから降りてから15分もしないで対応してもらえた。
もっと時間のかかるものだと思っていたのだが。
現在12時30分過ぎ。
早速、搭乗券をみどりの窓口に提出して、「ひがし北海道フリーパス」を購入した。
Peachを利用したのも、このきっぷを買うためだった。
詳しいことはJR北海道のページを見ていただきたいが、かんたんに説明すると、LCC航空会社限定の利用で格段に安く北海道を回ることができる企画乗車券だ。
Peachの代わりにAIRDOを使っても同じことができるようだけど、そっちはよく調べていない。(詳細 : AIRDO ひがし北海道フリーパス・きた北海道フリーパス|JR北海道- Hokkaido Railway Company)
さらにU25割が適用され、12680円で購入することができた。
快速エアポートに乗るのは初めてだった。
新千歳空港を利用するのも初めてだった。
――北海道には何度か訪れたことはあったが、そのほとんどは函館だった。
札幌より東へ行ったことがないし、それより北も行ったことがない。
3泊4日の道東旅行。
ひとまず札幌を目指して、列車は新千歳を出発し、南千歳を経由して、千歳線を北上した。
約30分で札幌に到着した。
やはり列車を降りると、とてつもなく寒い。
行きの飛行機はできるだけ身軽にしようと軽装だった。旅先で服を買い足そうと思っていた。
改札階に一度降りて、発車標を見上げる。
まだ旭川行まで時間がある。
近くにあった駅ビルのGAPでセーターを買うことにした。
日曜の札幌駅前は非常に混雑していた。
道を行き交う人々は冬の格好だ。
手短に買い物を済ませ、改札に戻る。
駅弁を買い、暫くすると列車が入線してきた。
初めて乗る列車名、車両。
旭川へは、1時間半ほどの乗車だ。
札幌駅で購入した駅弁を食べながら移動。
これからの車窓は今まで見たことのないものばかりになる。
先程も言ったが、私はまだ札幌より東へ行ったことがない。
3日後、新千歳へ戻ってくるまで、初めての光景の連続になる。
新千歳を降りてから初めて乗る特急列車に揺られながら、破茶滅茶に心を踊らせて、1時間半の移動時間を楽しんだ。
旭川駅に到着した。
トレインシェッドの非常に立派な駅舎だった。雪国らしい。
木彫の柔らかな印象を受ける駅構内。
改札を抜けて、「三浦綾子記念文学館」を徒歩で目指す。
駅舎を出ると、すぐに目に飛び込んできたのが、忠別川とその橋梁。
函館と札幌しか知らなかった私に、北海道の景色が飛び込んできた。
これが北海道かと。まず手始めに旭川駅前に広がる地方都市の広大な風景を目に焼き付けることができた。
なんとも北海道らしいバス停。
辺りは薄暗い。先を急ぐ。
着いた。20分ほど歩いただろうか。
建物は林の入口に建っており、またその林は『氷点』でも描写された見本林だ。
三浦綾子の作品に触れたのは、大学3年、4年のころだった。
母の影響で『塩狩峠』『氷点』『続氷点』を読んだ。
私は特定の宗教を信仰していない無宗教者であるが、キリスト教に関連した内容の三浦綾子文学の世界に魅せられた。
前々から訪れたくは思っていたが、しかし北海道という立地がなかなかのハードルだった。
今回の北海道の旅の目的の3割ぐらいはこの『三浦綾子記念文学館』に訪れることだったかのように思う。
さて、建物の中は私営の博物館でありながら、非常に内容の濃いもので、三浦綾子の生涯をこと細やかに解説していた。
また別館には三浦綾子が作家として過ごした部屋を再現した区画があった。
結局、2時間ほど滞在して、じっくりと展示を見ていた。
外に出るとほとんど日が落ちていた。
見本林を10分ほど散歩し、旭川駅へ戻る。
途中、バスに乗り旭川駅北口へやってきた。
札幌から旭川へやってきて降りた南口とは雰囲気がガラッと変わり、都会的な印象を受けた。というかバリバリの都会だ。
駅の北と南でこれほどまでに正反対というのは驚いた。
バスの中で夕食を食べる店を物色していたのだが、結局のところラーメンを食べようということになった。
スマホで場所を確認しながらラーメン屋へ向かう。
google mapで調べた限り、最もレビュー件数が多く、かつ評価の高かった『梅光軒』にやってきた。
現在時刻18時過ぎ。
昼に札幌から旭川へ向かう特急列車の中で食べた駅弁が腹に入れた最後の食事だったため、とても腹が減っていた。
店内には行列ができていて、20分ほど並んで着席できた。それほど人気店ということだ。
旭川ラーメンは今回始めて食べた。
美味しかった。身にしみる美味しさだった。
一瞬で食べ終わって『梅光軒』を退店すると、駅前の平和通り商店街をぶらぶらした。
次の列車まで少し時間がある。
今日は旭川で滞在ではない。まだ今日は終わりではない。
これから網走へ向かおうとしていた。
写真には行先に「ABASHIRI」の文字が見える。19:08発。
隣には「LIMITED EXP. OKHOTSK 3」と書かれている。
特急オホーツク3号。
旭川から網走へ向かう最終列車だ。
網走到着はなんと23:00。これから4時間近くの長時間乗車になる。
車掌さんが交代している。
特急カムイに続き、初めて特急オホーツクに乗車する。
まだ今日は終われないと気を引き締めて乗車。
車内は暖かく、まもなく眠りに落ちることになった。
眠りから覚めると、まもなく網走駅に到着するアナウンスが聞こえた。
とても寒い。吐く息が真っ白だ。
予約していた宿に向かう。
網走駅付近の第四種踏切を渡る。
時刻は23時過ぎ。真夜中で人通りもない。
今朝、埼玉の自宅を出発してから24時間経っていないというのに、遠く網走という果ての街をたった一人で歩いているこの感覚の非現実感がとてつもなくたまらなかった。
https://goo.gl/maps/YLuUGQ6ydxKoE3t38
『民宿ランプ』という宿にお世話になる。
暖かい雰囲気の民宿で、夜も遅いというのに宿の方はとても丁寧に部屋の設備や風呂場の説明をしてくれた。
ストーブで部屋を温めて、風呂に入り、歯を磨き、ようやく長かった1日を終えることができる。
翌日は網走を観光することにしていた。
疲れ切った体を少しでも休ませようと、布団に入り眠りに落ちた。
続く