南東北に1泊2日で雪を見に行った -1日目 鳴子温泉-
前回の続き。
アラームで起きた。
シャワーを浴びて、顔を洗い、髭を剃り、淡々と出発の支度を済ませる。
忘れ物がないかを何度も確認してからドアを開ける。
冬の冷たい風が吹き付け、心地が良い。少ししか寝ていない頭に冴え渡る。
今年初めての外の空気だった。
いつも通り西武線で池袋に出てから、埼京線に乗り、赤羽で上野からやってきた列車に乗り換える。
上越線のときは5時23分の高崎線普通高崎行き821Mに乗車したが、今回はそれより3分早い、5時20分の宇都宮線普通宇都宮行き521Mに乗車する。
これが昨日であれば混雑したのであろうが、この日はホームは人がまばらで、車内も本当に空いていた。
外は真っ暗だ。
それでも段々と夜が明けてくる。感覚的には初日の出を見るようだった。
幾度となく行き来した宇都宮線は安心感があった。
もうすぐ宇都宮だ。
この日、東北本線は黒磯から新白河までの間で運休があるということだった。
早朝と終電の列車がそれに該当し、もしかしたら足止めされるかもと若干不安を覚えながら北上をする。
黒磯に向かう。恒例のメルヘン顔の209系が出迎えた。
しばしロングシートに揺られながら、そういえば新白河で系統分離してから初めて東北本線に乗ることに気づく。
以前の記事に書いたのをうっすらと思い出していた。
黒磯に着くと、E531系がいた。
E531系の東北本線方向幕。新鮮だった。いや、違和感のほうが強かったか。
結局、電気設備工事による影響はなかった。定刻で黒磯を発つ。
おそらく「新白河」という文字を付け加えたであろう発車標。
新白河まで20分ほどの短い時間をボックスシートで過ごす。車窓は東北本線で、気分は常磐線だった。
新白河に着くと、本来繋がっていた線路は物理的に分離されていた。奥には乗ってきたE531系が見える。
なんというか、頑なにここは通さないぞ!という強い意志を感じるコンクリートブロックである。
そのコンクリートブロックを通り越して、本来つながっていた線路の上にE721系がいた。
郡山へ向かう。
新白河から1駅の白河から小さく見える白河城。これもいつもの光景。
途中、鏡石あたりで列車は徐々に遅れることに。強風の影響だった。
郡山では20分ほどの乗り換え時間があるので、そう焦ることはなかった。徐行して走るE721系にエールを送る。
結局、25分ほど遅れて郡山に到着した。
新白河から乗ってきた普通郡山行き2127Mの列車が、そのまま普通福島行き1133Mになった。この運用には何度か遭遇しているけれど、毎回こうなのだろうか。
というわけで、遅延による接続待ちどころか、車内から1歩も出ることなく福島に直行することに。
さっきまで徐行していたのに、郡山を出ると途端にスピードを出し始めたE721系。強風は大丈夫かなと一瞬心配になる。それとも弱まったのかな。
特徴的なこの緑色の球体が車窓に映ると、もうすぐ福島だなと実感する。
福島では乗り換え時間が30分ほどあった。
とりあえず駅を出る。
快晴だった。
地面にはところどころ、黒く泥で汚れた雪が端に寄せてあった。
福島ではよく乗り換え時間が発生するので駅から外に出ることが多いのだが、実際にはこの駅前広場より先に出たことがない。
毎回歩き回るには微妙な時間なので、それなら駅ナカで買い物をしようと思ってしまうのである。
今回も例に漏れず、駅舎を一望して満足し、駅へ戻る。エスパルを軽く見て回って、NEWDAYSで軽食を買い、ちょうど列車が入線してくる時間になるので、乗車をする。
次に乗るのは、快速仙台シティラビット3号仙台行き3573M。
E721系の充当だった。
NEWDAYSで買った、福島県民のソウルフードならぬソウルドリンク「酪王カフェオレ」を飲みながら仙台を目指す。郷に入れば郷に従え、である。
着いた。
久しぶりに来た気がしないのは、8月に来ているからか。
それでも、ここまで来ると、安心感と達成感に包まれる。
大きい。何も知らない人が、ここは東京の駅だと言われたら納得してしまうだろう。
仙台より先の旅程をこれまでの道中考えていたのだが、これから山寺を観光しようとしても、着くのが昼過ぎになってしまう。
正直それでも良かったのだが、明日の朝、早い時間に訪れて、人の少ない山寺を観光したほうが雰囲気もいいし、お参りというのは本来午前中にするものだということを知ったので、明日に回すことにした。
今日は鳴子温泉に向かうことに。
このまま東北本線をさらに下り、小牛田へ向かうのだが、次の列車まで時間が余っている。
元旦の翌日なので果たして温泉施設は空いているのかという不安もあったので、駅ナカの観光案内所でその情報を聞くことにした。
係の方によると、情報そのものが入ってきていないので、わからないとのことだった。
親切にも、鳴子温泉のパンフレットに問い合わせの電話番号を調べて書いてもらい、駅の近くにも観光案内所があるので、そちらでも訊いてみてください、と教えられる。
係の方にお礼を言って、そろそろ小牛田行きが出る時間なので、改札に向かう。
12時を過ぎていた。起きてからまだしっかりとした食事をしていなかったのだが、不思議とお腹はそこまで減っていなかった。
それでも、鳴子温泉に着くまではだいぶ時間が空く。念のため、途中の列車内で飢えないように、駅弁屋でサンドウィッチを購入した。
そろそろ列車が出る時間だ。急いでホームに向かった。
2543M。すごく混んでいた。
こんなに混むのか。まるで東京のようだなと、再び感じてしまう。
こういうときこそ、ロングシートであって欲しかったといつもとは反対の感想を持ち、車窓に松島が見えてきた辺りまで立ち乗車。
小牛田に着き、陸羽東線に乗り換える。
キハ110系。調べたらキハ111・112形という車両らしい。
どうも未だに、気動車の形式についてはよくわからない。
一応調べたことを書くと、車体の長さによって、キハ100系とキハ110系に分かれているらしい。前者が16mで、後者が20m。
キハ100系のなかにもいくつも形式があって、同様にキハ110系のなかにもいくつか形式がある。キハ111形と112形はキハ110系のうちの1つ。
キハ111形と112形は片側運転台で、1両単位の運転が可能だが、基本的にはキハ111・112形として運用される。
なるほど、片方にしか運転台が無いのだから、逆方向に進めない。
小牛田では乗り換え時間が短く、すぐの発車となる。
なんとか着席することが出来た。思いの外、私と同じことを考えて、東北本線から陸羽東線に乗り換える乗客が多かったのに驚いた。鳴子温泉へ行くのだろうか。
それでも、すぐに車内は空いてきた。小牛田から3駅の古川は、大崎市の中心都市で、地域輸送としての役割が大きいらしい。
小腹が減ったので、サンドイッチをいただく。
小腹満たしにぴったりだった。
福島からずっと晴れていた空が、古川を過ぎたあたりで雲に覆われ、雪が降り始めた。
少しずつ強くなる。
強風と雪の影響で、列車は徐行したり、停車したりを繰り返す。
それでも長時間同じ場所に留まるということはなく、終点の鳴子温泉に10分遅れで到着した。
仙台で案内されたとおり、駅舎に併設してあった観光案内所で、営業中の温泉施設を訊ねることにする。
やはり、年始ということでいくつかの施設は閉まっているみたいだった。
営業中の温泉を紹介してもらい、雪の中歩いて向かうことに。
鳴子温泉の街並みは落ち着いていて、歩きやすかった。
ただ、寒さには逆らえず、降り続ける雪から逃げるために早足で進む。
訪れたのは、こちら。
共同浴場の「滝の湯」さんと迷ったのだが、タオル類を持ってくるのを忘れたため、こちらの「幸雲閣」さんを選んだ。
若干駅から遠いのだが、歩けない距離ではない。
10分ほどで着いた。
入浴料と貸しタオルの料金を含めて、1000円ちょっとだった。
エレベーターで6階の大浴場に向かう。脱衣所は広めだった。
宿泊客がほとんどだった。大きな荷物を背負っていたのは私一人で、目立っていたと思われる。
浴場も広かった。シャンプーやボディーソープも備え付けられている。
お湯は黒湯で、ヒリヒリと肌に弱い刺激が伝わってきた。なかなか良い。
残念ながら、雪の影響で露天風呂は立入禁止になっていた。
ガラス越しで見る雪は情緒に欠けるので、露天風呂に入りたかったのだが、仕方ない。
1時間ほどで出た。
暖まった体を再び雪に晒しながら、駅に戻る。
往路の陸羽東線でホテルを予約したので、あとは仙台に戻るだけだった。
もう1つくらい、温泉に入れるかなと思ったのだが、復路の列車を考えると、そうもゆっくりしてはいられない。結局、鳴子の温泉街を少し歩くだけにとどめた。
雪は止んでいた。
道中にあった案内図。ひとまず温泉神社に行こうと思った。
昔町役場として使われていた建物。年始だったので閉まっていた。
このあたりは2006年3月31日までは鳴子町と呼ばれる町だった。
現在では古川市などと合併し、大崎市鳴子温泉という住所になっている。その名残り。
駅方向に歩いていく途中にあった。
この時はなんだかよくわからず、とりあえずアーチを潜った先にある建物に入る。
「手湯」というものを初めて知った。手を入れて楽しむ温泉らしい。
足湯の亜種のようなもの。温かかった。
駅の反対方向の道へと進む。
温泉っぽい光景。一帯にはものすごく湯気が漂っていた。
「早稲田桟敷湯」さんは早稲田大学の学生が掘り当てた温泉だという。
こちらも候補の1つだった。
外観が特徴的で、建物も早稲田の関係者が建てたものらしい。時間があったら是非入りたかったのだが、断念。
このあたりは鳴子温泉のメインストリートらしく、浴衣姿に身を包んだ観光客が湯巡りを楽しんでいた。
鳴子温泉には「湯巡り手形」という、お得にいくつもの温泉に入ることができるチケットが販売されている。
帰り際になってこの手形の存在を知り、ショックを受けたのを覚えている。
いつかまた一度来て、私も浴衣姿で街をぶらつき、1日中温泉に入りまくろう、そう決意したのであった。
鳴子温泉で最も有名な公共浴場の1つである「滝の湯」さん。
その横には「鳴子温泉神社」という神社がある。
列車の時刻まであと少しだけ余裕があった。駅から若干離れるが、行ってみることに。
日も落ちてきて、いい感じの雰囲気になっていた。こういうところは、テンションが上がる。
奥の階段を上り、境内に入る。
私以外誰もいなかった。本殿まで続く雪の足跡を辿る。
辺りはシンとしていて、もう半端じゃないくらい神秘的だった。雪化粧がさらにそれを際立たせている。
雪を踏む音だけが響いていた。
参拝。"初"詣だった。
今年1年の無事と平安に加え、半分終了したこの旅の成功を願う。
何年ぶりかわからない初詣を終えると、時間も時間なので、足早とその場を立ち去ることにした。
ホームに着くと同時に列車が入線。
1740D。陸羽東線仕様のキハ111・112形だ。緑と赤のラインに、前面には奥の細道と書かれてある。
これから仙台に戻り、あとは寝るだけ。
帰りの列車はずっと寝ていた。小牛田に着いてもしばらく起きなかったので、危うく東北本線上りの仙台行きに乗りそびれるところだった。
仙台に帰ってきた。
今知ったが、「なかけちょう」と読むらしい。仙台のアーケード街である。
夕食をいただくお店を探す。
市街をぐるぐる回っていたが、めぼしいお店もなく、行列ができていたここに決めた。
列には並びたくなる質なのである。
仙台では有名なラーメン店らしく、いつでも行列ができているらしい。
牛タンとも迷ったが、仙台に来るたびに牛タンを食べていたのでたまには趣向を変えてみた。
食券を買い並ぶこと10分、席に通される。
5分ほどで着丼した。
見た目ほど濃くなく、美味しかった。ネギ入れ放題だったのも良い。
量に関しては(大)というほど多くなく、腹6、7分目ほどだったので、若干の物足りなさを感じながら退店。ごちそうさまでした。
1日中動いていたせいか、空腹が満たされると同時にものすごい眠気が襲ってきた。
予約した宿に直行することに。
国分町に宿を取っていたので、地下鉄で向かう。
東北の歌舞伎町とも呼ばれる国分町は、飲み屋街が立ち並ぶ繁華街。
せっかく来たのだから国分町周りをぶらぶら歩いても良かったのだが、明日は朝早く山寺へ行く予定なので、我慢した。
コンビニで夜食などを購入し、チェックインを済ませて、就寝。
アラームは5時にセットした。起きれますように。
1日目終了。
続く