南東北に1泊2日で雪を見に行った -序章 寝正月から一転して-
年が明けた2018年1月1日は、ぐったりと一日中家で寝ていた。
前日の12月31日に、東京ビッグサイトで行われたコミックマーケットに朝から参加し、その反動で疲れ果てていた。
起きたのは夕方ごろ。元旦という貴重な1日を半分以上失ったことによる喪失感で、そのまま二度寝をしようかとも思った。
いわゆる寝正月だった。
毎年、年末こそ有明で忙しいが、反対に年始は家でぐったりすることが多かった。
今年の帰省は家族の都合でなくなったし、このままでは東京に引きこもることになる。
出かけようかな。くるまった布団の中で、3回分余った青春18きっぷを思い出す。使用期限は10日まで。
まとめて使うとなると、明日明後日の残された三が日しかタイミングは無い。
このままではいけないと思い、飛び起きた。
そして、明日の始発に向けて荷造りをしながら、旅程を考え始めた。
雪を見たいと思った。
先日の上越線の件で、嫌というほど雪を見て、そして雪のせいで危うく帰れなくなるという経験をしたはずなのに、それでも雪を見たかった。
ただ、流石に上越線にはもう乗りたくなかったので、目的地を東北に決める。
東北となると、日帰りはきつい。さらに、残った青春18きっぷを少しでも消費したかったので、泊まる前提の旅程を立てることにする。
その上で、初詣を今回の旅の目的にしようと思った。
ここ数年、初詣には出かけていない。昔は地元の神社にお参りしていたが、それも億劫になってしまっていた。
これまでお参りしていなかった分を取り戻そうというわけではないが、ご利益のあるところへ初詣に行こう。そう思った。
東北の初詣スポットについて調べていると、いくつか出てきた。
遠いところでは青森の善知鳥神社や、岩手の盛岡八幡宮などがヒットしたが、今回は1泊を想定していたのでちょっと厳しいかと思い、断念。北東北というよりは南東北に絞って調べることにした。
ふと時刻表の路線図を眺めていると、目に入ったのが「山寺」の文字だった。
仙台と山形を結ぶ仙山線の山形寄りにある山寺は、一度訪れてみたい観光地の1つだった。
当初、初詣は神社のイメージがあったのだが、調べてみるとお寺でも問題ないことを知る。
駅から徒歩でお参りできるアクセスの良さにも惹かれた。山に登る必要はあるが。
この機会に山寺に訪れることにした。
宿はビジネスホテル、もしくは安く済ませるためネットカフェにしようと思っていた。
山寺となると、仙台か山形に泊まることになるだろう。
ひとまず仙台を中心に考えて、他に観光できるところを探す。
いろいろ調べていると、「青春18きっぷで行く温泉番付」なるものがヒットした。
平成19年6月8日発行の月刊誌「旅の手帖」7月号において紹介されていたものらしく、青春18きっぷを使って訪れるのにふさわしい、つまり駅から徒歩で入れる温泉地が「東番付」と「西番付」に分かれ、いくつも書き連ねてある。
ドンピシャだった。これはちょうどいい。参考にしよう。
今回は東北なので、東番付に注目した。
東番付では、「草津温泉公共浴場」が"前頭"、「青森市内温泉銭湯」が"小結"、「黄金崎不老ふ死温泉」が"関取"、「吹上温泉『吹上露天の湯』」が"大関"となっており、そして最もランクの高い"横綱"として「鳴子温泉郷」がランクインしていた。
仙台から2時間ほどでアクセスできる鳴子温泉は、この番付にふさわしく、駅から歩いて温泉に入ることができる。いくつもの温泉施設が点在しており、その中から選ぶのも楽しそうだ。
仙台から東北本線を下り、小牛田で陸羽東線に乗り換えて、山形との県境を越えないあたりにある。陸羽東線は小牛田と新庄を結ぶローカル線で、別名「奥の細道湯けむりライン」となっており、鳴子温泉のための観光路線のようだった。
ということで、「山寺」と「鳴子温泉」この2つを今回の旅の目的とした。
ここで時計を見ると、日付が変わっていた。1月2日。元旦が終わった。
荷造りに調べ物をしていたせいで、出発当日の深夜2時を過ぎていた。
始発に乗るためには4時過ぎに家を出なければならないので、まだわずかながら寝れる。
アラームをセットし、寝た。起きれることを願って。
続く