片道6時間かけて松本城を見に行った話
12月24日.日曜日.新宿駅.クリスマスイブの朝.
前日の夜遅くから,地元のファミレスで中学時代の旧友たちと傷の舐め合いをして,迎えた朝.
目的もなく出かけることにした.
近くの定食屋で朝食を頂き,ひとまず家に戻り,シャワーを浴びて身支度を整え,すぐに再び外へ繰り出した.
池袋についたのは9時過ぎ.
指定席券売機で青春18きっぷを購入し,改札できっぷに日付を入れてもらう.
バイト明けからのファミレス徹夜で回転率が低下した頭をそれでも動かして,ひとまず新宿まで出ようという結果に至った.埼京線で新宿まで出る.
この日の新宿駅は,やはりいつもの新宿駅とは雰囲気が若干違っていた.
日曜日のクリスマスイブは,いつもは忙しなく騒々しい新宿駅のホームを少し浮かれた雰囲気にさせていた.
しかし,それだけではなかった.こいつの存在があった.
12月23日に営業運転を開始した新車.
鉄と思われる人たちが中央本線特急列車の発着する9・10番線ホームで写真を撮っていた.
全身ピカピカでかっこいい.
E353系と戯れるのはこれくらいにして,すぐさま中央線快速列車高尾行きに乗り込み,ひとまず甲府まで出ることにした.
端の座席を確保できたので,背もたれに寄りかかり爆睡.
高尾駅に着くと同時に目を覚まして,ホームに降り立った.
いつもの天狗像が出迎えてくれた.
ホームのキオスクで食料を確保し,列車を待つ.
入線してきた211系.
折り返し普通甲府行き535Mとなる.
中央東線の211系は,0番台と1000番台がセミクロスシート,2000番台と3000番台がロングシートらしい.
乗車したのは1000番台.車内はガラガラで,4人がけのボックスシートを1人で使うことができた.
間もなく発車し,甲府を目指す.
中央東線の車窓は中々お気に入りで,ボックス席の窓側に座り,何もせずただぼーっと列車から見える田園や渓谷の景色を眺めるのが常なのだが,今回ばかりは車内の暖房が心地よすぎて大月より手前でいつのまにか眠りこけてしまった.
高尾のときと同様,気付いたら甲府に着いていた.
オレンジ色の駅名標.オレンジ帯の車体.
関東の人間にとって東海の車両は珍しい.
改札を出て,駅前に降り立った.
何度か訪れている甲府は,地方都市特有の匂いというか雰囲気があって非常に好きな街だ.
しかも,そこまで東京から離れすぎていないせいか,都会的な印象も持ち合わせている.
それでも街は着飾っておらず,この土地の人柄も素直な印象を受ける.
まあでも,私が単に地方都市が好きなだけなのかもしれない.
さて,甲府に着いたはいいが,それからの予定を決めていない.
どうせならもっと遠くへ行きたいが,時間の関係もあるし,今日中に東京に戻らなければならない.明日は今年最後の大学に顔を出す日であった.クリスマスなのに.
身延線で静岡に抜けることも考えたが,乗り潰すだけになりそうで,なにか物足りない.
甲府駅をブラブラしながら働こうとしない頭を無理やり働かせる.
悩んだ末,今回はこのまま中央東線を奥へ進み,スーパーあずさに追い抜かれながら,一度も足を踏み入れたことのない松本を目指すことにした.
未だ,松本城を見たことがなかった.
発車標を確認し,次に出る普通小淵沢行きの列車に乗ることにした.
この列車もセミクロスシートだった.高尾からの列車だったようで,甲府駅で多くの乗客が降りた.それでも,小淵沢に向かう乗客もいて,車内は若干混雑していたが,無事着席できた.
またも睡魔に襲われ,座った瞬間に眠りに落ちた.新宿からほとんど眠りっぱなし.
今日,ほとんど車窓を眺めていない.もったいないことをしたなと今になって思う.
小淵沢に到着した.
次の列車まではまだ30分ほどある.比較的ゆっくりできそうだ.
前に来た時はもっとボロくて小さかったはずの駅舎.
いつの間にかこんなに大きく立派になっていた.というか展望台が出来ていて驚いた.
4時間は車内で睡眠を確保し,流石に節々が痛くなった体を引きずり改札を出て,展望台へ向かう.
奥に見えるのはおそらく八ヶ岳.
思ったよりすぐに見飽きたので,数分で駅舎から出る.
駅前にいた猫.カメラを向けると物怖じするどころか興味深げに近づいてきた.
周辺を歩いてみたが,前と来たときと変わっていなかったので,再び駅に入った.
駅舎の1階に,土産屋と簡単な軽食スペースが設けられていたので,時間もまだ余っているし入ることにした.
小淵沢に来たら牛乳を飲む.なんとなく恒例になっていた.
信玄餅はおみやげに購入.
ぼちぼちホームに戻る.
改札に入り,塩尻方面のホームに向かう際の跨線橋で,こんな張り紙が貼ってあった.
多分,この地域じゃかなり高めの時給じゃないだろうか.
というか,巫女ってアルバイトだったんだ.まあ別に不思議でもないか.
面接って何聞くんだろう.想像するとなかなか面白い.
下り中央東線ホームに降り立つと,程無くして普通松本行きがやってきた.
今回ばかりはロングシートに当たった.座れたのでよしとする.
結局,小淵沢から松本までの間も,寝た.我ながら笑ってしまう.
松本に着いた.
想像以上に大きな駅だった.
先程通ってきた隣県の県庁所在地,甲府駅といい勝負ではないか.
ホームから「まつもと~まつもと~」と独特のアナウンスが聞こえてくる.
特急列車がバンバン発車する.しかも,2系統.
新宿行きの特急スーパーあずさに,名古屋行きの特急しなの.
色々感動した.
中京圏と,首都圏の間.もう少し行くと長野だが,その手前の松本も中々いい.
駅の外に出た.
大きな広告が駅舎全面に貼られている駅は,大きな街だということを主張しているように思え,素敵である.
駅ナカ施設が充実していると,なお良い.
やはり私は地方都市が好きなのだろうか.
妙な高揚感のまま,早速,松本城を目指す.
寄り道しながら向かったため,20分弱かかった.
天守はまだ現れない.
松本城を取り囲むように松本城公園はあって,その入口にはいかにも観光客然とした外国人の人だかりができていた.
公園を突っ切る.
見えてきた.
すごい迫力.この距離からでも威圧感が半端なく伝わってくる.
事前に松本城について調べていた時,天守の中に入るまでに1時間はかかる,などの情報がちらほら見えて,松本に入れる時間の制約的にもしかしたらとんぼ返りすることになるかも…と危惧していたのだが,全く問題なかった.
30分ぐらいなら許容しようと覚悟を持って券売所の前まで来たら,この通りで,肩透かしを食らった.
更に,観覧料も,事前に調べた時は大人610円とのことだったのだが,この時は410円だった.あとで調べてみると,夕方割というもので安くなるみたいだ.(2017年12月現在)
さて,券売所を通り抜け,いよいよお城に近づく.
すぐに開けたところに出た.
夕焼けによって更に映えるお姿は見事に立派だった.
手前の砂利道の両脇は,本丸跡らしく,もともとあった部屋の場所などが解説されていた.
時間も限られているので,早速,中へ入る.
入り口では,履物を脱ぎ,スリッパに履き替える.履物はビニールに入れて持ち歩く.
中は,やはり広くて,1フロアだけでも見ごたえがある.上のフロアへは,かなり急な階段を上ってゆく.
中には展示もあり,昔使われていた火縄銃や,刀など,松本城にまつわる物がかなり多くあった.
全て見て回ると2時間は優に超えるだろうと思われる.
急な階段を6階分上るといよいよ最上階にたどり着き,景色を一望できる.
が,窓から風がビュービュー吹き抜け,とても寒かったのですぐに退散した.
夏場は気持ちが良いんじゃないかと思う.
急な階段は,降りるときも一苦労で,もしかしたら上るときより大変だったかもしれない.
少なくとも,片手には履物を入れたビニール袋を下げているので,人によっては両手が塞がった状態でこの急な階段を下らなければならない.
一生懸命手すりにつかまりながら下りたので,手荷物が多めの方はあらかじめロッカーなりに預けてお城に入るのをおすすめする.
松本城を出て,公園を少しぶらつく.
現在時刻16時半過ぎ.帰りは17時21分松本発普通甲府行きの列車に乗る予定だ.
松本城から松本駅までは,ゆっくり歩いて20分ほどなので,もう少しいられる.
といっても,特筆すべきことは何もせず,本当にただ周りを歩いただけだった.
夕暮れの松本はやはり寒く,厚着にマフラーと手袋をしてきたのだが,それでも堪えた.
駅へと向かう.
松本の街並みはいたって都会的であった.
PARCOがあったのは驚いた.多くの人とすれ違い,それ以上に,多くの車とすれ違った.
もっと時間があったら,もっと早く着けていたら,多くを見れただろうと思うと,もっと朝早く出発するべきだったと後悔してしまう.
賑やかな通りを進み,駅に着く.
かなり時間が余ってしまった.
もっとお城の中をゆっくり見れたなと思いつつ,おやきを購入し,ホームで食べる.
ホームには,JR東海の特急しなのと,もうすぐ引退するE351系特急スーパーあずさが顔を並べていた.
おやきを食べ終わると同時に甲府行きの211系が入線してきたので乗車する.
よりにもよって,帰りの長距離列車がロングシートになってしまった.
しかし,松本を発車する頃には車内はかなり混雑していて,ロングシートである必要性が分かった.
甲府まで爆睡.
起きたら甲府に着いていたようで,そそくさと車内を出る.
甲府駅では30分ほど乗り換え時間があったので,お土産店を物色することにした.
この寒いなか信玄餅アイスを購入して,ホームの待合室で食べた.
少し経って,大月行きがホームにやってきたので乗り込む.
やってきた列車がボックスシートだとわかったので,いそいで改札口に戻り,NEWDAYSでワインを買ってきた.
大月までまどろみながら飲んだ.
飲み終わる頃には大月に着いていた.
ここでも若干の乗り継ぎ時間があったので,改札を出る.
ホームからでもこの光り輝くイルミネーションが目に入った.
クリスマスイブの夜,この時間にこの場所に1人でいることが辛くなった.
寒くなったので,改札前のベンチでこの光景をぼーっと見ながら,東京行きの列車を待った.
E233系がやってきた.
ああ,もうこの短い旅も終わりなのだなと長い編成のボックスシートを見て思い知る.
こうして東京に帰りました.
帰りは,乗り継ぎの時間もあったけれど,松本から5時間ほどで新宿に着くことができた.
行きは高尾,甲府,小淵沢での乗り換えがあった関係で6時間かかったらしい.
2017冬の青春18きっぷ1回目は松本に日帰りで松本城を見に行った話,以上.